先に答えを言います。前撮りの緊張は、撮影が始まってから30分もすればほどけていきます。そしてほどくのは、あなたではなく私たちカメラマンの仕事です。だから緊張したまま来てください。この記事は、その「30分」に現場で何が起きているかを、撮っている本人が書いたものです。
こんにちは。Libarsでフォトグラファーをしている中村ステフェンといいます。前撮りの相談で、いちばんよく聞く言葉があります。「楽しみなんですけど、緊張しそうで」。この記事は、その一言を口にしたことのある人に向けて書いています。

いちばん緊張していたふたりの話
忘れられないご夫婦がいます。兵庫の、海の見える小さな駅で撮った日のこと。集合したときのご新婦様は、文字どおりガチガチでした。「楽しみ。でも緊張する」と言ったきり、表情が固まっている。ご新郎様がそっとエスコートして、駅前から歩き始めました。
30分後、そのご新婦様は坂道ではしゃいでいました。最後は海辺の堤防にぺたっと張りついて、上りたそうにして笑っていた。撮影の後半、街のお店のおじさんが傘を貸してくれて、通りすがりの人に「おめでとう」と声をかけられて、緊張がどこに消えたのか本人も覚えていないと思います。
こういう変化を、私は何百回も見てきました。井の頭公園で撮ったご夫婦は「緊張する!」と言いながら駅へ歩き出して、公園に着く頃にはもう和やかでした。川越の食べ歩き前撮りでは、緊張と照れでそわそわしていたふたりが、スイートポテトパイをひとくち食べた瞬間に空気が変わった。だから断言できます。緊張は撮影の入口に必ずあって、そして必ず途中で消えます。

現場で私が何をしているか
種明かしをすると、私は撮影で意図的にお笑いの技法を使っています。ちょっとしたいじり、ギャップ、言い換え。「笑ってください」とは言いません。言われて作った笑顔と、こぼれた笑顔は、写真にすると別物だからです。
もうひとつやっているのは、とにかく体を動かしてもらうことです。歩いてもらう。走ってもらう。くるくる回って踊ってもらう。ウェディングフォトで踊るのは変だと思うでしょう。でも、止まってポーズを取るから固まるんです。動いている人は固まれません。
あとで知ったのですが、これは表情フィードバック仮説という心理学の知見と重なっていました。感情が先で表情が後、ではなくて、体が動くと感情が後からついてくる。現場の経験則が先にあって、理屈は後から見つかった順番ですが、「考えると緊張する、動くとゆるむ」は撮影のたびに実証されています。
食べ物の力も借ります。よく遊びに行っていた街で撮ったご夫婦とは、マクドナルドで腹ごしらえするところから撮影を始めました。ポテトを食べさせ合って、手を洗っているところまで撮って、そこからお散歩へ。食べている人はカメラを意識できません。緊張が仕事をする暇がないんです。


最初の硬い1枚も、ちゃんと撮っています
これは意外に思われるのですが、撮影開始直後の、まだ表情が硬い時間の写真も、私は大事にシャッターを切っています。
あの初々しさは、その日の最初の10分にしか存在しません。アルバムを時系列で見返したとき、最初のページの少し硬い笑顔があるから、後半の爆笑が効いてくる。「この5分後にはもう笑ってたよね」という物語の起点です。緊張は失敗ではなくて、その日の一部なんです。
だから、当日ポーズの練習をしてくる必要はありません。むしろ準備した型は、動きながら撮る現場では邪魔になります。ひとつだけお願いするなら、ふたりの思い出の場所と、やってみたいことを話し合ってきてください。初デートの店でも、よく行く銭湯でも、飼っている犬でもいい。それが当日のコースになって、緊張の入り込む隙間を埋めます。
スタート前の緊張が嘘のようにずっと笑顔だったご夫婦がいました。理由は単純で、その日のコースが「前から気になっていたカフェで念願のランチ」という、ふたりが楽しみにしていた予定そのものだったから。撮影に楽しみを足すのではなく、楽しみな予定に撮影がついていく。順番をこれだけ逆にしておけば、あとは現場でなんとかします。

写真嫌いの相方を連れてくる人へ
「私は楽しみだけど、夫が写真嫌いで」という相談もよくあります。大丈夫です。「普段ほとんど写真を撮らない」ご夫婦を、私たちは何組も撮ってきました。
コツは、写真がメインに見えない一日にすることです。食べ歩き、思い出の場所巡り、好きな店。本人にとっては「デートしてたら撮られてた」くらいの体験になるよう組み立てます。この街を歩きながら撮るスタイルの全体像は街中前撮り(街中ウェディング)の完全ガイドにまとめています。ソロカットのときも、相方がカメラマンのすぐ後ろで見守る配置にするので、ひとりで放り出される時間はありません。
それでも心配なら、Photoraitの口コミを読んでみてください。87件で★4.9、「緊張したけど楽しかった」系の声が並んでいます(レビューページ)。緊張しやすい人ほど、動きながら撮るこのスタイルが合うというのが、撮ってきた側の実感です。
よくある質問
▸▸Q. 緊張で顔がこわばってしまったら、その写真はどうなりますか?
A. 撮影時間の中で表情は必ず変わっていくので、こわばった時間帯があっても問題ありません。実際のご夫婦も最初の10〜30分は硬めで、後半に自然な表情が増えます。納品時にはその変化ごとお渡しするので、硬い1枚も物語の一部になります。
▸▸Q. 人前で撮られるのがどうしても恥ずかしいです。人目の少ないプランはありますか?
A. あります。平日午前のスタート、路地裏や公園中心のコース、貸し切りできる施設(銭湯やカフェ)の組み合わせで人目はかなり減らせます。一方で「賑やかな場所のほうが誰も見ていなくて楽だった」という感想も多いので、当日の様子を見ながら調整もできます。
▸▸Q. 当日までに練習しておくことはありますか?
A. ポーズや笑顔の練習は不要です。準備してほしいのは、ふたりの思い出の場所と「やってみたいこと」をひとつ話し合っておくことだけ。それが当日のコースと写真の中身になります。
実際の撮影の一日を、noteで読む
この記事に出てきたご夫婦の撮影は、それぞれnoteでレポートしています。緊張がほどけていく過程を写真つきで見たい方はこちらへ。
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🎬 この撮影、動画でも残せます
Libarsは写真と同じ1日の中でウェディングムービーの撮影もできます。実際の雰囲気はこちらの動画からどうぞ。
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